October 14, 2008
私のキャリア半生記(転勤編)
1999年7月。
私の在籍していた会社は欧米の大手同業他社を買収し、念願のグローバルカンパニーになりました。社名からもASIAが消え、記者会見とレセプションがインターコンチネンタルで華々しく開かれ、数か月前にシニアマネジャーに昇格した私はマネジメントの一角としてその席に座りました。
つい先日まで会社で会ってもお行儀よく挨拶するだけの相手のBIG BOSSが並ぶ中、私なんて場違いだなぁと思いつつもおろしたてのスーツでわくわくドキドキ・・・眼だけはキラキラさせていたように思います。
しかし常に買収の裏には早急な合理化が必要になります。同じポストに2人は要らないので各拠点で買収した会社された会社いずれの社員がそのポストにとどまるか、本人の能力や経験とともにグループ全体の構図を見ながらの人事調整をしなくてはならないのです。
ここが外資のドライなところで、必ずしも買収した側の社員が有利になるとは限らない。もちろんそれが大半の例ではありますが、そもそも優秀なリソースを持つ会社だから買収をしたわけで、ならば優秀な人材には活躍の場を残し自社の社員を他へ回すのも戦略のうちでした。私が業務上深くかかわる東京オフィスもその対象にありました。
8月のある日、突然上司に呼ばれた私は東京の組織再構築のミッションを負うことになりました。
社長室にには上司であるジェネラルマネジャー他、数人の役員が顔を揃え、これを機会に東京オフィスの人事考査、2社が抱えているそれぞれの顧客との契約内容の総点検と合理化、各契約に基づきオペレーション業務の合理化と再構築を行うというミッションの内容を説明いただきました。
「東京へ転勤してもらいたいがシンガポール本社には戻ってきて欲しい。ただ、東京の次期ジェネラルマネジャーが決まるまでの1年間、長期出張という形で東京に行って欲しい」
この辞令はまたまた私をワクワクさせました。組織を動かす最初のマネジメント経験になるからです。それがどれだけ大変なことかも知らずに・・・無知な自分ならではの大胆さを持って即座にYESと答えました。社長は一瞬あっけに取られた顔をしましたが。
「で、赴任の時期は?」
「来週にでも」
「はぁ〜?」というのはこの日、既に木曜日だったからです。
来週って4日後じゃない・・・今度はこっちが唖然とする番。
すると手配よろしく人事のGMが赴任に関する諸規定をまとめた書類を広げました。
「毎月1回は本社の会議で出張になること(もちろん移動は週末を犠牲にする・・・)。だからシンガポールの部屋は借りたままでいいわね。二重の家賃は申し訳ないから東京での住まいは用意するわ。シンガポールの給与は今まで通り。赴任手当という名目で東京での生活費補助を円建てで出します(これが驚くほど少ない・・・)。引っ越し荷物?30キロまでチェックインできるんだから赴任時に持って行って。引っ越し業者を頼む必要はないわ(おいおい、日本のマンションは家具もカーテンもないんだぞ)。引っ越し先は着いてから探してね(当たり前だ。週末入れても4日しかない)。一応、不動産エージェントの連絡先は今日渡します(でも電話番号だけだった)。来週いっぱいはホテル暮らしでいいけど、次週にはマンションに入居してね(ハイ、最大限努力させていただきます)。」
再び唖然・・・合併後バタバタしている東京のスタッフに身の回りの世話まで頼めないことはわかっていました。シンガポールの住まいも毎月3週間以上留守にするには家賃が高すぎる。とりあえずあと3日で荷物まとめて一旦赴任して来月の出張時にシンガポールの部屋を解約してどこか1部屋借りてそこに荷物を移し・・・東京の不動産屋へは今日にでも希望条件を送って事前に見繕ってもらおう・・・それから、それから・・・
視線が宙に浮いた私の前には上司のGMがにっこり。
「じゃあ来週からの仕事の打ち合わせするね。私のオフィスに来て」
オフィスに入るなり買収先の持っていた契約書のコピーが数冊のファイルに。
「これ、行く前に一応目を通してわからない点は私に確認して。東京に着いたら最初の1週間は営業担当者とお客様を回って今回の合併についてしっかり説明してね。あ、もうアポは取り始めてるって言ってたっけ」
私「あのぉ、家探す時間とかありますか?」
上司「うん、半日ぐらいでまとめてやって(そ、そんな無茶な。下見せずに決めるのか?)」
私「あ、でも家具とか電化製品とか買わないとならないですから」
上司「まあ何とかなるよ。たった1年のことだし(いやそういう問題じゃないんですけど)」
まあ実際、赴任の時期に一番苦労したのは日本の事情に全く疎い本社が家賃負担をしたために、いちいち本社人事にかけあわなければならなかったことでした。
「なぜ礼金などという不可解なものがあるの?アナタ、騙されてるんじゃない?」「なぜ敷金が2か月分もいるの?」
「仲介手数料は借手負担?あり得ないわ!」
に始まって
「どうして支払が現金でなきゃならないの?札束持って移動中に盗まれたらどうするの?」
という気が狂いそうなナンセンスなやりとりを数日にわたりしなければならなかったことです。
改めて家具・電化製品つきがスタンダードであるシンガポールのコンドミニアムがうらやましくなりました。
家具がない、カーテンもない、というマンションが日本は大半であることを彼女はついに理解できなかったようです(あるにはありますが、広尾・家賃120万円とかです・・・そうメールしたら完全に無視されました)。
でも、人間やろうと思えばなんとかなるものです。
私は翌週の水曜日の早朝便で東京に向かったのですから。
複数のやるべきことが雪崩れ込んだ時、即座に優先順位をつけ反射的に体が動く。
その点はちょっとうまくなったのかもしれません。
ただ、ここでも7時間のフライト中はひたすら爆睡でした。
私にとって3年ぶりの日本での仕事でした。
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私の在籍していた会社は欧米の大手同業他社を買収し、念願のグローバルカンパニーになりました。社名からもASIAが消え、記者会見とレセプションがインターコンチネンタルで華々しく開かれ、数か月前にシニアマネジャーに昇格した私はマネジメントの一角としてその席に座りました。
つい先日まで会社で会ってもお行儀よく挨拶するだけの相手のBIG BOSSが並ぶ中、私なんて場違いだなぁと思いつつもおろしたてのスーツでわくわくドキドキ・・・眼だけはキラキラさせていたように思います。
しかし常に買収の裏には早急な合理化が必要になります。同じポストに2人は要らないので各拠点で買収した会社された会社いずれの社員がそのポストにとどまるか、本人の能力や経験とともにグループ全体の構図を見ながらの人事調整をしなくてはならないのです。
ここが外資のドライなところで、必ずしも買収した側の社員が有利になるとは限らない。もちろんそれが大半の例ではありますが、そもそも優秀なリソースを持つ会社だから買収をしたわけで、ならば優秀な人材には活躍の場を残し自社の社員を他へ回すのも戦略のうちでした。私が業務上深くかかわる東京オフィスもその対象にありました。
8月のある日、突然上司に呼ばれた私は東京の組織再構築のミッションを負うことになりました。
社長室にには上司であるジェネラルマネジャー他、数人の役員が顔を揃え、これを機会に東京オフィスの人事考査、2社が抱えているそれぞれの顧客との契約内容の総点検と合理化、各契約に基づきオペレーション業務の合理化と再構築を行うというミッションの内容を説明いただきました。
「東京へ転勤してもらいたいがシンガポール本社には戻ってきて欲しい。ただ、東京の次期ジェネラルマネジャーが決まるまでの1年間、長期出張という形で東京に行って欲しい」
この辞令はまたまた私をワクワクさせました。組織を動かす最初のマネジメント経験になるからです。それがどれだけ大変なことかも知らずに・・・無知な自分ならではの大胆さを持って即座にYESと答えました。社長は一瞬あっけに取られた顔をしましたが。
「で、赴任の時期は?」
「来週にでも」
「はぁ〜?」というのはこの日、既に木曜日だったからです。
来週って4日後じゃない・・・今度はこっちが唖然とする番。
すると手配よろしく人事のGMが赴任に関する諸規定をまとめた書類を広げました。
「毎月1回は本社の会議で出張になること(もちろん移動は週末を犠牲にする・・・)。だからシンガポールの部屋は借りたままでいいわね。二重の家賃は申し訳ないから東京での住まいは用意するわ。シンガポールの給与は今まで通り。赴任手当という名目で東京での生活費補助を円建てで出します(これが驚くほど少ない・・・)。引っ越し荷物?30キロまでチェックインできるんだから赴任時に持って行って。引っ越し業者を頼む必要はないわ(おいおい、日本のマンションは家具もカーテンもないんだぞ)。引っ越し先は着いてから探してね(当たり前だ。週末入れても4日しかない)。一応、不動産エージェントの連絡先は今日渡します(でも電話番号だけだった)。来週いっぱいはホテル暮らしでいいけど、次週にはマンションに入居してね(ハイ、最大限努力させていただきます)。」
再び唖然・・・合併後バタバタしている東京のスタッフに身の回りの世話まで頼めないことはわかっていました。シンガポールの住まいも毎月3週間以上留守にするには家賃が高すぎる。とりあえずあと3日で荷物まとめて一旦赴任して来月の出張時にシンガポールの部屋を解約してどこか1部屋借りてそこに荷物を移し・・・東京の不動産屋へは今日にでも希望条件を送って事前に見繕ってもらおう・・・それから、それから・・・
視線が宙に浮いた私の前には上司のGMがにっこり。
「じゃあ来週からの仕事の打ち合わせするね。私のオフィスに来て」
オフィスに入るなり買収先の持っていた契約書のコピーが数冊のファイルに。
「これ、行く前に一応目を通してわからない点は私に確認して。東京に着いたら最初の1週間は営業担当者とお客様を回って今回の合併についてしっかり説明してね。あ、もうアポは取り始めてるって言ってたっけ」
私「あのぉ、家探す時間とかありますか?」
上司「うん、半日ぐらいでまとめてやって(そ、そんな無茶な。下見せずに決めるのか?)」
私「あ、でも家具とか電化製品とか買わないとならないですから」
上司「まあ何とかなるよ。たった1年のことだし(いやそういう問題じゃないんですけど)」
まあ実際、赴任の時期に一番苦労したのは日本の事情に全く疎い本社が家賃負担をしたために、いちいち本社人事にかけあわなければならなかったことでした。
「なぜ礼金などという不可解なものがあるの?アナタ、騙されてるんじゃない?」「なぜ敷金が2か月分もいるの?」
「仲介手数料は借手負担?あり得ないわ!」
に始まって
「どうして支払が現金でなきゃならないの?札束持って移動中に盗まれたらどうするの?」
という気が狂いそうなナンセンスなやりとりを数日にわたりしなければならなかったことです。
改めて家具・電化製品つきがスタンダードであるシンガポールのコンドミニアムがうらやましくなりました。
家具がない、カーテンもない、というマンションが日本は大半であることを彼女はついに理解できなかったようです(あるにはありますが、広尾・家賃120万円とかです・・・そうメールしたら完全に無視されました)。
でも、人間やろうと思えばなんとかなるものです。
私は翌週の水曜日の早朝便で東京に向かったのですから。
複数のやるべきことが雪崩れ込んだ時、即座に優先順位をつけ反射的に体が動く。
その点はちょっとうまくなったのかもしれません。
ただ、ここでも7時間のフライト中はひたすら爆睡でした。
私にとって3年ぶりの日本での仕事でした。
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