ここ数年、私が関わっているボランティア活動にドッグシェルターの運営、つまりは捨て犬の保護活動があります。

発端は以前の会社で東京に転勤になった際、愛犬をシンガポールから同行させたものの東京のマンションでは犬は飼えず、泣く泣く静岡の両親に預けたことからです。そのうち帰省できない週末に、せめて他人様の犬でも触れたら・・・という思いで探して府中市にあるSALAネットワークというNPO団体で捨てられてしまったワンちゃんたちの世話をボランティアとして始めました。犬を2−3頭連れて散歩に行って帰ってはまた別の犬を連れて散歩。運動不足の解消に良いわ〜、ぐらいの気持ちで始めたのですが、そのうち、ペットブームの影で商品として取り引きされる犬たちの不幸な運命が後を絶たない事実を知り、表面的な活動だけではなくドッグシェルターの運営そのものに関心を抱くようになりました。

会社を退職して起業準備期間の1年間は資格取得のための勉強と時々シンガポールと日本を往復するぐらいしか特にすることもなかったので、一時期はこの団体宿舎に泊まり込みで活動したりもしていました。犬を連れて老人ホームを訪問したり、新宿西口の小田急百貨店前で街頭募金をしたり。それまでずっと会社員生活一辺倒でしたから、こうした活動は新鮮でもあり、また同時に自分の今までの人生では見えなかったものが色々見えてきて、一層、個人ができる社会貢献とは何か、そもそも社会貢献そのものについても自分なりに考える機会を与えられました。

シンガポールに戻ってから、今はASD(Action for Singapore Dogs)という団体で同様の活動をしています。昨年9月から年末までは、2009年度の犬たちの医療費とシェルター運営費を集めるために、土曜日ごとに島内のショッピングセンターにカレンダー(保護されて里親先で幸せに暮らしているワンコの写真多数掲)やオリジナルデザインのTシャツなどを販売しました。Scotts RoadのIsetan地下、Suntec City, Marina Square, OrchardのCentrePoint・・・ずいぶんたくさんのショッピングセンターに行きましたね。そこでブースを設けて、胸に「日本語でどうぞ!」のプレートを付けて来店される方に対応するのです。(今のところあまり日本人のお客様がいらしたことはないのですが)。販売するだけではなく、もちろんこの団体の活動内容を詳しく説明したりもします。口コミで里親が見つかることもありますからね。

ボランティア仲間は今のところ全員シンガポールの方ばかりですが、家庭の主婦あり、お医者さんあり、学生あり、システムエンジニアあり、学校の先生あり、“Between the Job person(つまり求職中の人)”あり、つい先日までシンガポール航空で飛んでいた元フライトアテンダントあり(彼女はDuty Free Salesで磨いた販売スキル→ついでにもう一品お買い上げ〜、を存分に発揮してくれました)・・・今は店を息子に任せて現役引退したホッケンミー屋のご主人もいましたね(その店に伺うといつも大盛サービスにしてくれます・・・太るけど)。

こうした販売ブースを出さない土曜日は、この団体の運営するドッグシェルターに行きます。Lim Chu Kangというシンガポールの地の果て・・・Woodlandsをず〜っと西に行ったシンガポールの島のはずれ、と言えばわかるでしょうか。とにかく森みたいなところで何もないところです。そこへPIE、BKEと高速道路を突っ走って行くのです(通勤はたかだか片道15キロ弱なのに、私の車が毎月の走行距離が1500キロを軽く超えるのはなぜか?これが理由です。別に道に迷ってムダ走りしているわけではありません!)。

ここのドッグシェルターには70頭もの犬が保護されており、犬舎の清掃や散歩、躾トレーニングなど、やることがいくらでもあるのです。汗だくになりますし、蚊に刺されやすい私は全身に蚊よけスプレーを振りかけての肉体労働になります。それでも世話した犬たちの嬉しそうな表情、虐待されて人を信じなくなった犬が心を開いてなついてきた時の感動は言い表せないものがありますね。

飼えないからと持ち込まれたり、野良犬になってしまった犬を保護し、必要な医療を与え、躾をし、里親を探して第二の人生に送りだす。この仕事をすると、生き物を終世世話する覚悟もなくブランド物のバッグを買う感覚で犬を買う人の多さとその無責任さに驚きます。犬はどんなに可愛くても、血統書があるお高い犬であろうとも、ゴハンを食べ、オシッコをし、ウンチもするのです(犬のウンチは相当クサいです)。散歩も最低一日一度は必要です。それが毎日毎日毎日毎日・・・あるのです。人間並みに病気にもなるし、そうなると医療費もばかになりません。少なくとも私の愛犬=オスのジャックラッセル雑種のクリニック代は私がGPに行くよりずっと高い(涙)。

帰国するにあたり、引っ越し先で犬が飼えないからと言って、飛行機に乗る直前にチャンギの森に犬を捨てた日本人家族もいました。その犬は哀しいことに保護されてからも日本語にしか反応しないのです。

私がこうした活動を細々と続けているのは、動物の純粋さに単純に魅かれることもひとつですが、こうした活動を通じて命の大切さをわかってほしいから。私が日本を出て13年が経ちますが、この間、日本は人間がどんどん壊れていってしまったような印象を得るのです。紛争地帯でもないのに、これだけ簡単に人が殺される国もないのではないかと思います。それも家庭内殺人やホームレスなどの弱者を一方的に痛めつける残虐行為。調べてみるとそういう人たちの多くが、子供時代に動物虐待をやっていることが多いのです。自分より弱い者を保護するのではなく虐める行動を取ってしまう。そして虐めるとなるととことんやってしまって命さえも奪ってしまう。社会の成長段階を考えると、いずれシンガポールもそうなる可能性はゼロではないと思います。

ドッグシェルターの使命は単に動物を保護することだけではなく、そもそも捨てられる動物が出ないよう啓蒙活動を行うことが根本的な使命としてあります。こうした活動はアメリカや欧州の一部(とくに英国やドイツ)などではさかんですが、アジアではまだまだのようです。しかしその社会的意義は今後は広く認められていくのではないかと思います。

犬を飼いたいと思っている貴方。
犬は大型犬で8年ほど、小型犬なら15年近くも生きる生き物です。
本当に終世その世話ができますか?
もう一度問いかけてから決めてください。
そして、飼うことを決めたらまずはドッグシェルターで探してみてください。
商品として売られている犬たちも可愛いけれど、シェルターにも可愛い犬はたくさんいます。
一度は人間に裏切られた犬たちに、貴方自身が人間として、もう一度その犬に生きるチャンスを与えてあげてください。犬は終世その恩を忘れず貴方に「与えることの喜びと充実感」をプレゼントしてくれますよ!

ASDの活動を知りたい方、犬を飼いたいが迷っている方がいらっしゃいましたら、お気軽に私までご連絡くださいね!ボランティア活動に興味のある方も大歓迎です。できる日だけでも構いません。まずは与える喜びに第一歩を踏み出してみてくださいね!